「……玲の思い通りってことかよ、」

「え、なに?」

「…なんでもないです」



宇佐美くんが何を言ったか分からなかったけれど、とにかく誤解を解けたのであれば良かった。




「宇佐美くん…手が痛いです…」

「手?あ、ごめんつい」

「つい…?」




…この強さは絶対わざとだったと思うけど。

宇佐美くんは感情のこもっていない謝罪をすると、私の手を握っていた力を緩めた。




「もー花火終わりそうですね」



パラパラと花火が散ってゆく。

高校生活最後のイベントが完全に終わりに近づいている。

文化祭が終わることよりも、宇佐美くんと過ごすこの時間が終わってしまうことの方が名残惜しかった。




「ね、せんぱい」



宇佐美くんが私を呼ぶ。

彼が話しかける前によく付ける「ね、」が、私は結構好きだった。