「…え?」



宇佐美くんがいたから頑張れた。
宇佐美くんがみてくれていたから、私は。




「…人前で歌えた、初めて」

「…そ、ですか」

「だから、ありがとう」





​─────ドォーン…




花火がはじまったようだ。


パラパラと散ってゆく光。
グラウンドの賑やかな声は、少しだけ遠のいて聴こえる。



「せんぱい」




宇佐美くんの声だけがやけにクリアだった。

隣にいる宇佐美くんに視線を移す。元々綺麗な顔は、花火の照明に照らされて一層綺麗に見える。


これは、…後夜祭マジックとでも言うべきか。






「俺、せんぱいのことが好きです」






昨日言われたその言葉は、幻ではなかったらしい。

宇佐美くんの瞳が私を捉えて離さない。
ドキドキする心臓は、花火に負けじと大きい音を立てている。







「…せんぱいの返事、…聞かせてほしいです」