宇佐美くんの口封じ




ステージ裏と廊下は直結していて、観客が落ち着いた頃に出演者は廊下から出ることになっている。

廊下を挟んで向かい側には空き教室がいくつかあるので、軽音楽部のみんなは文化祭中は楽器や荷物をそこに置くのが主流になっているのだった。




宇佐美くんはまだステージの裏にいるのだろうか。
とりあえずまず「おつかれ」を言って、それで、あとは……あとは…なんだ?



何も話すことが思いつかない。

後夜祭の時に話すことはたくさんあるけど、今話すことは特にないんじゃないか?

あれ、私、今宇佐美くんに会う必要ある?




そんなことをグルグル考えて、ステージ裏に繋がる扉の前に突っ立っていると。



「…え、せんぱい?」



引き戸が空いて、中から不思議そうな表情を浮かべた宇佐美くんが顔を出した。



「どうしたんですか?」

「え、どう、っどうもしないんだよね、あはは!」

「はい?」




やばい。めちゃくちゃ変な目で見られてる。