「雅ってさー、もしかして今まで彼氏どころか好きな人もいたことなかったんでしょ」

「…えっ!?」




リハーサルを終えた私は、昨日回れなかった分も楽しもうと言うリコと、ワッフルをほおばりながら校内を歩いていた。

もうすぐ宇佐美くんのいるバンドのパフォーマンスの時間になるので、ワッフル片手に体育館に向かう。



リコには昨日のことをすべて話し、今日の後夜祭の花火を一緒に見る約束をしたという旨を伝えると、「ふーん」と適当に相槌を打った後、急にそんなことを言いだした。



「あたしこの3年間ずっと、雅は恋愛の話はあんまり好きじゃないだけかと思ってたのよ。ただ経験値がないだけだったとはねぇ」

「うっ…」

「まあいいんじゃない?そんな雅だったから後輩くんも恋に落ちちゃったわけだし」




「羨ましいわー」と心のこもってない声で言うリコ。


結局あの後リコと会ったのは私のライブが終わった後だった。

疲労と打撲による痛みから聞き忘れていたけれど、そういえば倉野くんとはどうなったのだろう。