Side –玲-




「…玲、っ」




彼女が俺の名前を呼んだ時だった。
音楽室の入り口に、きっと雅さんを探しに来たであろう宇佐美の姿が見えたのは。




「雅さん、…宇佐美のことどう思ってますか?」





そう聞いたのは、悔しかったからだ。


彼女の恋を応援したいとは思う。



だけど、俺だって根っから良い奴なわけではない。

経験値0の雅さんに絡んで、案の定好きにさせた宇佐美。

俺が1年半、ずっとそばで眺めることしかできなかった彼女を、こんなにも簡単に好きにできるなんて、…お前ばっかりずるいんだよ。



抱き寄せたのは流れからして仕方のないことだったけど、それでも俺は幸せだった。

好きで好きで仕方のなかった彼女が、自分の腕の中に納まっているのだから。