私の“線引き”に悲しそうに顔を歪めた宇佐美くんに気づかないふりをして、私は麻央さんの前にしゃがみ込んだ。



「…あの、…宇佐美くんのこと好きなら嫌がることはしないであげて、」

「…っ」

「私はいいけど…その写真、バラされたら宇佐美くんだって迷惑かかっちゃうから。…気が向いたらでいいから、消してください」




私の言葉に、麻央さんは心底驚いたように目を丸めていた。

それだけ言い残し、私は宇佐美くんを見ないように保健室のドアに手をかける。





「…宇佐美くん、手当ありがとう。…バイバイ」





ガラガラ…と音を立ててドアを閉める。
こみ上げてくる感情全てをぐっと抑えて、大きく息を吐く。


これでよかったんだ。私は間違ってない。



あの写真をバラされて、宇佐美くんに悪影響が出てほしくない。
私を“特別”だなんて思わないでほしい。


宇佐美くんは、“みんなの宇佐美くん”でいなくちゃいけないんだ。


自分で選択したからには、私には寂しいも悲しいも思う権利はないのだ。








知りかけた答えに、私は今日で蓋をする。