「江波さん、お店に着きましたよ!」

そこは署から程近い、馴染みの居酒屋だった。

「お、今日は二人かい?何にする?」

「じゃあ、生2つお願いします!」

居酒屋の親父に声をかけられ、俺の分まで安藤は勝手に注文していく。

「おい、俺、ビールなんて言ってないだろ。」

「え~、違うのが良いんですか?」

「イヤ、ビールでいいけど・・・。」

「でしょ!」

全く何なんだ、俺は今そんな元気じゃないんだよ・・・。

俺の気も知らず明るい笑顔の安藤に、ウンザリしながら項垂れた。

「あ!生きましたよ!ハイ、かんぱ~い!」

安藤は勝手に俺のジョッキと乾杯する。

俺は自棄になって、ビールをグイっと喉に流し込んだ。


お通しを口に運びながらビールを煽っていると安藤が小声で言った。

「江波さん、元気出してください。
 振られても次の出会いがありますよ。」

「お、お前、なんで・・・・それ・・。」

驚きのまま安藤の顔を見る。

いつもは生意気で、口の減らない安藤が女の顔をしている気がした。

ドキッッ!

「私が江波さんの変化に気づかないわけないじゃないですか!?
 だって・・・私は、ずっと江波さんの事見てましたから・・・。」

「エッ!?それって・・・どういう・・・。」

安藤の言ってる事も良く分からないし、何故か今日は安藤が可愛く見える。