「江波さん、何か暗いですよ。」

安藤が俺の顔を覗き込みながら心配そうに言う。

「そ、そんな事ないぞ?」

「そうですか?
 あの、今日は特に大きな事件もありませんでしたし、パッと飲みに
 行きませんか?」

「ハッ!?お前とか~?」

「良いじゃないですか!
 もう、江波さんには拒否権ありませんから!行きますよ!」

安藤はそう言って、勢いよく俺の背中をバンッと叩くと肩までのボブを
揺らしながらスタスタ歩いて行く。

その後姿を見ながら、俺は数日前の事を思い出していた。




3月25日の碧さんの誕生日から3日経った日、俺のスマホには一通のメール
が届いた。

それは、碧さんからのものだった。

『ご無沙汰しています。
 江波さん、お元気ですか?
 先日、私の誕生日がきました。
 嘘のようですが、私の願いが叶いました。
 このまま蒼さんと一緒に暮らしていきます。
 江波さんには、色々支えて頂きありがとうございました。
 江波さんにも、幸せが訪れることを祈っています。』

俺は1%の可能性が消えたことを悟った。

『碧さん、おめでとう。お幸せに!』

俺からの最後のメールを送った。


俺は一人部屋の天井を見上げ、年甲斐もなく泣いた。