目の前には、水色のワンピースを着た女がいた。

いたというか、倒れているのか?

近づき、女の様子をよく見ると、唇は紫色に変色し、青白い顔
からは生気が全く感じられない。

恐る恐る女の手首に触れ脈を診ると、弱いながらもトクトクと
感じる事ができた。

“ このままではいけない。 ”

すぐさま病院へ運ぼうと女を抱きかかえようとした時、ふと目に
入る、女の右手。

何かを握りしめるように、ぎゅっと固く閉じている。

少し気になり、女の右手の指を開くと砂浜にポロリと転がり落ちる
何か・・・。

転がり落ちた物を指でつまみ上げると、リングだと分かった。

どことなく見覚えがあるリング・・・“ まさか・・・”

自分の心臓がドクドクと脈打つ、震える指で持つリングの内側を
見ると、見覚えのある刻印 “ S to R ”

“ 何故、これがここにあるんだ・・・。”

あるはずの無い物を握りしめていた女の顔をまじまじと見ながら
リングを震える手で自分のジーンズのポケットにしまった。


そして、、深呼吸をして気持ちを取り直すと自分の着ていた黒い
コートを脱ぎ、女に掛けると、女ごと抱きかかえるようにして
車に急いで向かった。