そんな中、少年犯罪防止のために相棒の安藤と繁華街の巡回をしていると
碧さんが歩いているのを見つけた。

「あ、碧さん!久しぶり、買い物?」

「江波さん!
 はい、この先のお店にちょっと用事があって・・・。」

「最近はどう?」

碧さんは、俺の問いに少し考える素振りをみせてからオズオズと口を開く

「あの・・ご迷惑じゃなかったら、少し相談したい事があるんですが・・・。」

何!?相談!俺に!

「全然迷惑じゃないよ。
 でも、今仕事中だから、今度の休みの時でも大丈夫かな?」

「あ、はい。全然大丈夫です。
 江波さんの都合の良い時に連絡いただけますか?」

「うん、必ず連絡するから」

碧さんは軽く頭を下げ去っていった。

そんな後姿を見送っていると安藤が近づいてきた。

「あの人って、記憶喪失の人ですよね?」

「ああ、あれから記憶も戸籍もないままだと暮らしていくのが大変
 だと思って、知り合いの弁護士を紹介したんだよ。
 先日、やっと戸籍も取得できたみたいだ。」

「そうだったんですか・・・。」

安藤は、何か腑に落ちない素振りを見せつつも、それ以上踏み込んで
聞いてくることはなかったが、どこか淋し気な表情で俺を見ていたのを
やっと掴めた碧さんとの接点に気を良くしていた俺は、気づくことも
なかった。