あの不思議な夢を見た日から、私の中で一つの想いがカタチと
なってハッキリしていくのが分かった。

“やっぱり、私は蒼さんに恋をしている。
蒼さんが、好き・・・。”

いつから自分がそういう想いを抱き始めていたのか分からない

穏やかに流れる二人での暮らしの中、いつも私を気遣って寄り
添い、そして導いてくれる蒼さん・・・。

思い返せば、初めて会った時から、蒼さんにだけは心を許して
いたようにも思う。


でも・・・

恋心を自覚すると同時に、自分は叶わぬ恋をしたのだと悟る


蒼さんの辛く悲しい過去

そして、梨花さんへの想い・・・

蒼さんが梨花さんに抱く想いが、どれ程のものか・・・

それは、あのベージュの布で隠されていた画を見れば一目瞭然
だった。


“私は、梨花さんには敵わない・・”




あっと言う間に、季節は秋から冷たい冬へと向かっていた。


その日、私はある決心を胸に蒼さんが居るであろうリビングに
向かった。

いつものようにリビングのソファーで寛ぐ蒼がそこに居た。

「蒼さん、ちょっと話があるんですが・・・」

「ん?何?」

「蒼さんのお陰で私には戸籍も出来ましたし、何時までも蒼さんに
 甘えていてはいけないと思うんです。
 考えたんですが、そろそろ自分の力で生活していこうかと思い
 まして・・・。」