あの日、碧に自分の過去を全て話してから、それまで心の中に
溜まっていた『澱』のようなものがスッと浄化されたような気
がしていた。


俺の過去の話を聞いて、碧が流してくれた涙は泣けない俺の
代わりに流してくれたようにも感じ、同時に俺の心を救って
くれた。


あの日から、数日経つが碧は今までと変わらず穏やかな笑みを
俺に向けてくれている。

こんなに、穏やかな心でいられるのは、一重に碧のお陰と
言っても過言ではない。


今日も作業部屋での仕事を終え、部屋からでるが、いつもより
静かな事に気づいた。

ふと、リビングを覗くと碧がソファーで転寝をしている。

俺は、碧を起こさないように静かに作業部屋に戻ると、一冊の
スケッチブックと鉛筆を手に取り、リビングに向かった。

俺は静かにソファーの向かい側に腰を下ろすと、碧の寝顔を
スケッチブックに描き始めた。



リビングには、俺の鉛筆を滑らすシャ、シャっという音と碧の
スースーという可愛い寝息が聞こえるだけだった。