蒼さんの過去の話は私が思っていたよりも、もっと辛く悲しい
ものだった。

そして、それと共に自分の胸の痛む理由にも同時に気がついて
しまった。

“私は、蒼さんに恋をしている”

過去の話を聞いていて、私が思った事は、梨花さんに向けられた
であろう想いを自分にも向けて欲しいということだった。

あの作業部屋で見た梨花さんの画は、慈愛と憂愁が混在していて
それは、私の胸を酷く締め付けるものだった。


私は、自分の部屋の窓から日が暮れ、夜に染まり始めた空を見上げ
ながら、叶わぬ想いを噛み締めていた。




その夜、私は不思議な夢を見た。


光の届かぬ暗い海の底・・・そこから、私を呼ぶ声がする・・・。

私は必死にその声に逆らうように海の底から逃げていた。

だが・・・気がつくとその声は私の耳元で何かを囁く・・・

その瞬間、私は激しい渦に飲み込まれてしまった。

激しくグルグル回る視界・・・


そして、私は透明な泡となって消えてしまった・・・。



激しい動悸と眩暈にも似た気持ち悪さで、目が覚めた。

身体中の毛穴から出たんじゃないかと思う程、酷い汗をかいていた


あれは・・・夢・・・

イヤにリアルな夢だった・・・。


でも・・・私の中には不思議とある確信があった。