「俺はね、俊が本当に好きだったけど、梨花の事は女として
 好きだった。
 でも・・・大好きな二人だったから、自分の気持ちに蓋を
 していたんだ。

 碧がみた画は、大学の頃に俺が描いた『梨花』だ。
 画の中なら、俺の気持ちも許されるような気がしたんだ・・・。

 
 俺は俊を失った梨花を必死に支えた。
 画の事も忘れて、梨花にいつでも寄り添っていた。
 自分では、出来るだけのことをしているつもりだった。
 そして、あわよくば俊の代わりになれるんじゃないかとすら
 思っていたんだ。

 俊が亡くなって、半年経った頃、梨花の様子も大分落ち着いて
 きていて、俺は梨花に自分の気持ちを伝えようと指輪を用意
 して、梨花に会いに行ったんだ。

 そしたら、部屋の鍵は開けっ放しで肝心の梨花はいなくて、
 テーブルの上には俺宛のメモがあった。

 何て書いてあったと思う?

 『俊のいない人生なんて、意味がない。
  私には、俊だけ。
  今まで、ありがとう。  
  さようなら。      梨花』


 次の日、この近くの海岸で梨花の遺体が上がった。


 それが、今から10年程前の話。

 それから俺は画が描けなくなった。
 何もする気が起きなくて、身も心も疲れ果て倒れてのがこの場所
 で、助けてくれたのが中川だ。


 そして、今の自分がここにいる。」