そんな事を思いながら部屋の奥に足を進めると、沢山の画の奥にベージュ
の布が掛けられた画を見つけた。


“見ちゃダメ!”

頭の中では警鐘が鳴っているのに、私の手は震えながらも真直ぐに画に
掛けられているベージュの布に伸びていく。

プルプル震える指先が布の端を掴んでしまった。

少しずつ布を下にずらしていく・・・。

布が床にポスッと音をたて落ちると同時に、私の目に飛び込んできたのは
『青』の世界とは全く別の異彩を放つものだった。


柔らかく温かみのある色彩で描かれた女性の画・・・。

光に向かって手を伸ばす女性の微笑みを湛えた表情は幸せに満ちていた。


私はただただ、その画に引き込まれていった。

その画には、画を描いたものの愛おしさが溢れていた。


それを感じた時、私の胸には小さな棘がいくつも刺さったように
チクチクと痛むのを感じた。


ただ、その時の私には、その胸の痛みがどういうものなのか、
何も分かっていなかった。