その日もいつものように家の掃除をしていた、するといつもは閉まって
いるはずの蒼の作業部屋のドアが少し開いていた。

私がここへ来た時、約束したことがある。

奏の部屋と、仕事の作業部屋は入らないという約束。

だから今まで部屋に入ったことはなかったけど・・・目の前には、
僅かに開いたドア・・・。

私は好奇心を抑えられずに、ドアの前に立った。

右手で白地のドアを軽く押すと、すんなりと内側にドアが開いた。


私はドアの前で立ち竦んでしまった。

その部屋には、『青』の世界が広がっていた。

見渡す限り、様々な『青』

そこは、圧倒されるほどの青い色で描かれた絵画で埋め尽くされ
ていた。

風景画であったり、静物画であったり、抽象画であったり・・・

全てが、青の色で描かれていた。

どれもが、素晴らしい作品だということは素人目にも感じたが
私には、何とも言い難いもの悲しさが伝わってきて、胸が締め
つけられるようだった。

一つ一つ作品を見ていくうちに私はあることに気がついた。

“蒼さんは、人物画は描かないのかな?”

この部屋の多くの作品の中には、一枚も人物が描かれたものはなかった