碧を助けたあの砂浜で俺も医師である中川に助けられたのだった。

何もかも、生きる事ですら諦めた俺に、中川は自分の家に連れていき
辛抱強く支え、見守ってくれた、そして、俺の画家という職業を知ると
「何でもいいから描け、お前の思いを画に込めるんだ。」
そう言って、俺に筆を持たせた。

俺は中川の言葉に頷くと、それから狂ったように一心不乱に思い
を込め、ひたすら絵筆を滑らせた。

出来上がった画は、様々な『青』を使った画だった。

悲しみ、後悔、怒り・・・そして、愛・・・。

俺の中にあった全ての感情を込めたその画は、その年の大きな賞を
受賞し、俺は一躍有名画家の仲間入りとなった。

その時から、俺の作品は『青』一色となり、虚無感を抱いたまま
送り出す作品は、俺の心情とは逆に世間から益々注目されるよう
になった。

名声は高まり、気がつけば俺は『青の魔術師』と呼ばれるように
なっていて、使い切れない程の金も入るようになっていた。



あれから、十年・・・・。



俺は、今、何を想う・・・。