江波の訪問が終わり、俺は作業場としている部屋に戻った。

ドアを開くと、そこは様々な『青』で埋め尽くされていた。


「どうかしているな・・・。」

俺は、先程までのリビングでの事を思い出していた。

江波と碧が話している姿を見て、なんとも言えない苛立ちが沸き起こっていた。

江波は碧の事を考え、手助けしてくれているだけなのに・・・・。

碧が江波ににこやかに話し掛ける姿が嫌だと感じたのだ。

何故?俺は自問自答する。

そして、一つの考えに辿りついた。

“そうか、俺は碧と一緒に過ごすうちに妹のように感じているのかもしれない。
身内を大事に想う気持ちが、この苛立ちを感じさせるんだ”


俺は自分自身に芽生えた感情をまだ分かっていなかった。




自分の気持ちを納得させると、目線は棚の上に置いてある写真に止まった。

そこには、笑顔の三人の男女。


俺は片手で写真立てを触ると、「フー」っと溜息をついた。



俺は芸大を出て、画家として生活していた。

もちろん、それは甘いものではなく、なかなか目の出ない俺は
日々の食糧にも困る程、生活はかなり困窮したものとなっていた。

それを陰ながら応援してくれたのが、高校からの友人でもあった
(シュン)と俊の彼女でもあった梨花(リカ)だった。

二人の支えもあり、少しずつだが仕事もできるようになっていた
頃、俺の人生を変える出来事が起こってしまった。


俺は、大切な人を亡くしてしまったのだ。


それからの俺は、自暴自棄になり荒れた生活を送るようになっていた。

そして、辿り着いたのがこの地・・・。