碧との生活は俺の予想以上に快適なものだった。

相変わらず記憶は戻らないものの、日常生活にはほとんど支障なく、頼んだ
ことを無難にこなしていく。

元々口数も少なく、人と関わる事を極力避けてきた俺には、碧に気の利いた
言葉など掛けれるはずもなく、会話らしい会話もたいしてないのだが、碧は
不満を漏らすこともなく俺の身の回りの世話をせっせとしてくれていた。

碧の存在のお陰か、それまで冷たく重い空気が漂っていた気すらしていた
自分の家の空気すら浄化されたような気がして、呼吸がしやすくなった。


「蒼さ~ん、コーヒー入りましたよ。」

「あぁ、今行く。」

作業していた手を休め、リビングに向かった。


テーブルで碧と二人コーヒーを飲みながらの休憩時間、最近の俺の楽しみ
の時間だ。

「あの、今更なんですけど、蒼さんの仕事って何をしてるんですか?」

「あ~、言ってなかったか?
 絵描き、画家っていうのかな。」

「そうなんですか!?」

碧が驚きの顔で俺を見た。

そりゃあ、いい大人がいつも家に居て籠っていれば、どんな仕事だろうって
不思議に思うよな。

「ああ、いつも俺が仕事している部屋が作業場だ。
 色々物が溢れているから、初めに言ったようにあの部屋は掃除しなくて
 いいから。」

「はい、分かりました。」


そんな会話をしながら、一時の休憩を過ごしていた。