うだるような暑さにセミの声。
夏本番を迎えた空から、
容赦なく太陽が照りつける。

遠くから、水泳補習の子供達があげる水飛沫と、はしゃぐ声が聞こえてくる。

午後から『あゆみ』の最終チェックに配布プリントのコピーをしたら今日はもう帰ろう。



昨日はなかなかヘビーな1日だった。



学校を出て、結衣子から聞き出したブランドで、
エンゲージリングを購入。
サイズもバッチリのはずだ。
その足で雅との待ち合わせ場所へ行き、
その場で跪いてプロポーズ。
そこが駅前のスタバだなんて、
気にしてられるか。
小さな箱を取り出す俺に、周囲の冷やかしの声。
あまりの驚きにポロポロ泣き出した雅だったが、
ちゃんとOKの返事はもらった。

「遅いよ!バカ!」

とキレられはしたけど、それもご愛嬌。
その場にいた観衆が、
手をたたいて祝福してくれたのは
言うまでもない。

問題はそこからだ。

泣き止んだ雅の行動は早かった。
速攻で雅のご両親と、俺の母親にまで連絡し、
その日のうちに両家の顔合わせ。

両家が揃うまでに、朝倉にも断りの電話を入れた。

「今後は良き仕事のパートナーとして。」

と、バッサリ切っていた。

怒涛の展開について行けなかったのは
どうやら俺1人だったようだ。

元々、母親同士は子供が幼稚園に入った時からのママ友。
「プロポーズされたよ!」
の一言で、料亭の個室が用意されただけじゃなく、親父たちに、双方の弟妹まで顔を揃えていた。
圧巻の連携プレーだ。

グズグズの俺は、弟妹からも超ヘタレ扱い。
ま、事実なんだけど。

とにもかくにも、俺と雅の婚約は無事調った。
来週には結納を済ませて、入籍する予定だ。
式は母校の大聖堂で。
そこは坂上家が譲れないところ。
もちろん、雅の家族も賛成してくれている。