無表情のまま、言い切った宗ちゃんに、そんな言葉しか返せない。
どれだけ素っ気なくても、いつだって表情や口調は優しかったのに……今の宗ちゃんは、少しだけ怖かった。
「宗ちゃん……何か怒ってる……?」
恐る恐る、そう聞く。
「怒ってないよ」
すぐに戻ってきた返事。
「でも……」
でも……?
続けて何か言いかけた宗ちゃんは、言うのをためらうように口の端を曲げた。
その横顔をじっと見つめていると、宗ちゃんの口から小さな声が零れる。
「……さっきの男、何?」
「え?」
さっきの男って……。
「颯くんのこと?」
どうしてそんなこと聞くんだろう?
もしかして、宗ちゃんは颯くんが苦手なのかな……?
基本的に誰とでも仲良くできる宗ちゃんが、否定的な反応を誰かに示すなんて珍しい。