――ちゅっ。

車内に響いた、可愛いリップ音。



「大好きっ……」



藍は顔を真っ赤にして、逃げるように車を出ていった。

突然のことに、驚いて動けなくなった俺。



「はぁ……」



ため息をついて、その場で頭を抱える。



「なんであんなに可愛いんだろ……」



今日一日、よく我慢したと自分を褒めてやりたかった。

会いたいとか、寂しいとか、藍はなんの気なしに口にするけど……俺のほうが我慢していることを、まったくわかってない。

会いたくてたまらないのも、好きでたまらないのも俺のほう。

俺がどれだけ――藍が可愛くて可愛くて仕方ないと思っているのか、少しも気づいてない。

ていうか、今日のは拷問だった。

俺の部屋に藍がいるってだけでたまらないのに、ベッドに寝転んで、俺の匂いがするとか言うし……さっきのキスだって……。