車のエンジンの音でかき消され、最後のほうが聞き取れなかった。

聞き返すように首を傾げて宗ちゃんを見れば、気恥ずかしそうにした視線がちらりと私を捉える。



「なんでもない」



すぐに視線を戻し、前を向いた宗ちゃん。

わしゃわしゃと、再び頭を撫でられた。

怒っていなくて、よかった……。



「宗ちゃんに撫で撫でされるの、好き……」



されるがまま、目をつむって宗ちゃんの手を感じる。

すると、ピタリと撫でる手が止まった。



「……だから、そういうのが……」

「……?」



何か言いかけた宗ちゃんは、私の頭から手を離した。

あ……もう少しだけ、撫でてもらいたかったな……。



「ほら、着いたよ」



え……?

宗ちゃんの言葉に、驚いて車の外を見る。



「ほんとだ……もう着いちゃった……」