「……それ、うまいのか?」


イチゴミルクの入ったグラスを見ながら、嶺くんが少し目を細めていた。

もしかして嶺くん、イチゴミルクを飲んだことがないのかな……?

その瞳が「不味そう」と言っているように見えて、私は持っているグラスを嶺くんへ差し出す。


「すごく美味しいよっ! 嶺くんも飲む?」

「…………は?」


せっかくだからこの美味しさを味わってほしいと思ったのに、なぜか私を見て目を見開く嶺くん。


「いらない……?」


どうしても飲みたくないなら無理強いできないけど……イチゴミルク、美味しいんだけどな……。

残念に思って、眉の端が下がってしまう。

そんな私を見ながら、嶺くんは意を決したようにグラスを受け取ってくれた。


「……じゃあ、一口だけ」

「うん! 絶対美味しいから……!」


イチゴミルクに絶対的な信頼を寄せている私は、自信満々に勧める。

ごくりと、嶺くんの喉が動いた。


「……あっま」


真顔のまま、そう口にした嶺くん。


「美味しいでしょう?」

「……まあまあ」


まあまあか……でも、イチゴミルクの味を知ってもらえてよかった。