後ろの席を見ると、すでに嶺くんの姿はなく、先に帰ってしまった様子。

池田くんと西原くんがいるから、一緒に帰れないとはわかってたけど……帰る場所が一緒なのにバラバラに帰宅するなんて、変な感じだなぁ。


「じゃーなぁ日奈太」

「お前、女顔だから気をつけて帰れよ~」


冗談を言っている池田くんに笑って、2人に手を振る。


「バイバイっ、また明日……!」


2人とも、最初は少し怖かったけど……すごく面白い人たちで、一緒にいると楽しいな。

男の子が苦手なのも、もしかしたら少しはマシになってるかも……ふふっ。

そんなことを考えながら真っ直ぐ寮へと向かう私の背後で……。


「なあ、昨日からなんかあいつ可愛くない……?」

「……お前、いくらなんでもモテなさすぎるからって、ついに男に走るつもりか……?」

「ちげーよ!!」

「……でもまあ、言ってることはわかる」

「……だろ?」


そんな会話が繰り広げられているなんて、知る由もなかった。


「た、ただいまっ……」


502号室に帰ってきて、すぐにリビングへ入る。

すると、すぐに雑誌を読んでいる嶺くんが目に入った。