教室までまだ100mほど離れている場所で、嶺くんが立ち止まった。

どうして……? 一緒の教室なんだから、一緒に行けばいいのに……。


「一緒に登校したら、不自然だろ」


その言葉に、「あっ」と納得した。

そっか……私と……ていうより、お兄ちゃんと嶺くんは、仲がいいわけじゃないみたいだから、一緒にいたら不自然に思われちゃうのか……。


「教室では、あいつらと喋っとけよ。多分お前の兄貴、あいつらとばっか連んでるだろうから。それと、外では俺のことは瀬名って呼ぶこと。わかったか?」


嶺くんのセリフに、私は頷かず、視線を下げた。


「でも……」

「ん? あいつらに何か言われたか?」


何か誤解をさせてしまったのか、心配そうに私を見る嶺くんに首を振る。


「ううん……みんな、いい人だけど……」


悠人くんも西原くんも池田くんも、話していると楽しいし、一緒にいることに不満はない。けど……。


「寂しいなって、思って……」


できれば、もっと嶺くんと一緒にいたかったな……。


「……っ」


嶺くんが、なぜかごくりと息を呑んだ気がした。