よくわからないけど、とりあえずついていこう。

嶺くんが立ち止まったのは、1つの教室の前だった。

教室、というより……。


「保健室……?」


どうして保健室に……?

も、もしかして、嶺くん風邪……? どこかケガしてるとかっ……!?

そう心配になったけど、どうやらそういう雰囲気ではなく、扉を開けた嶺くんは室内をキョロキョロと見渡して口を開く。


「おい」


低いけど、どこか優しさの混じったその声に、奥から白衣を着た女の人が現れた。

目を奪われるほど綺麗な、女の人が。


「あ! 嶺ちゃん……!」


その人は、嶺くんの姿を見るなりそう呼んで走ってくる。

あっ……この人の声、知ってる……。

昨日、部屋に来た人だっ……。


『嶺ちゃ……じゃなくて、瀬名くん、いますか~?』


嶺くんのこと、嶺ちゃんって呼んでるってことは……親しい関係、なのかな?

わざわざ部屋にまで訪ねてくる関係って……? なんだろう……。

一瞬、モヤッとよくわからない感情が顔を出した。


「その呼び方すんなって……」


目の前まで駆け寄ってきた女の人に、そう言った嶺くん。