ルームメイトの狼くん、ホントは溺愛症候群。

食事どころじゃなくて、味もよくわからなかったことを思い出す。

お昼は、いつもみんなで食堂で食べてるみたいだから我慢するけど……それ以外は、極力あの場所に足を踏み入れたくないっ……。


「料理できんの?」


驚いた様子の嶺くんの質問に、苦笑いを返す。


「食べられる程度には……」


上手ってことは決してないと思うけど……お弁当は、毎日作っていた。

それと、休日の夜ご飯も私が担当。

作るのは嫌いじゃないし、あの広いキッチンで料理できるのが少し楽しみでもあった。


「……俺も、日奈子の飯食いたい」

「え?」


突然の言葉に驚いて、消費期限を確認していた視線を嶺くんへと移す。

嶺くんは少し恥ずかしそうにしながら、じっと私のほうを見ていた。

その瞳が、おもちゃを欲しがる子供みたいに見えて、母性本能をくすぐられる。


「う、うん……! 頑張る……!」


断る理由もないし……1人分だけ作って食べるより、誰かと食べるほうが私も嬉しい。

それに……嶺くんにはたくさん助けられているから、このくらいのお願いなら喜んで聞いてあげたかった。

私の返事に、嶺くんは嬉しそうに笑う。