朝の6時に外に出てたなんて、何かあったのかな……?


「……いや、大した用じゃない。つーか日奈子は?」

「……っ、え?」

「財布持ってどこ行くんだよ」


不思議そうに、聞いてくる嶺くん。

けど、私は質問に答えるどころではなかった。

今、名前……。

さらっと呼ばれて、ひどく驚いてしまった。

昨日、「日奈子って呼ぶ」とは言われたけど……。

男の人に名前を呼び捨てにされるなんて、お兄ちゃんとお父さん以外経験したことがなかったし、なんだか慣れない……。

でも、嫌じゃ、ない……。


「……おい、どうした?」

「……っ、あ、いえ……! ちょっと食材を買いに行こうと思って」
「なんか作んの?」

「はい。朝ごはんを……」

「ふーん。俺も行くわ。ちょっと待っとけ」


え?

それだけ言って、個室に入っていった嶺くん。

すぐに戻ってきて、「行くぞ」と歩き出した。


「あ、あの、1人で行けますよ?」

「危ないから、あんま1人で行動すんな。どっか行くなら俺のこと呼べって」


どうやら、心配してくれているらしい嶺くん。


「ありがとうございます……」