食堂があるから、自分たちでは作らないのかな……?

こんなに立派なキッチンがあるのに、なんだかもったいない……。

そういえば、寮の1階のスーパーマーケットが朝6時から開いてるって地図に書いてあったはず。

時間もあるし、何か買って作ろう。

財布を持って、ウィッグを着用して支度をすませる。

嶺くんを起こさないように、そーっと部屋の扉を開けたときだった。

……あれ?

ぐいっと外側からドアを引っ張られ、前のめりになってしまう。


「きゃっ……!」


転ぶ……!と思ったけれど、ドアの向こうから現れた人に抱き止められた。


「……っ、ビビッた……悪い、大丈夫か?」


現れた人の正体は嶺くんで、心配そうにこちらを覗き込んでくる。


「は、はい……! すみません……!」

「いや、俺が急に開けたからだし、気にすんな」


 「悪かったな」と言って、頭をポンッと撫でてくれる嶺くん。

ドキッ。

あ……まただ……。な、なんだろうこれ……。

って、そうじゃなくて。


「嶺くん、どこか行ってたんですか?」


今帰ってきたってことは、家にいなかったってことだ。