瀬名、さん……?


「おい、さっきからうるせーぞ、お前」


池田くんから隠すように、私の前に立つ瀬名さん。

クラスがシン……と静まり返り、あきらかに異様な空気が流れていた。

瀬名さんは池田くんを睨みつけているのか、池田くんの表情が少し怯えている。


「こいつケガしてんだよ、やめろ」


どうこの場を収めようと思っていけど、沈黙を破ったのは瀬名さんのそんな言葉だった。


「え? 日奈太ケガしてるの?」

「えっと、じつは……」


悠人くんの質問に、とっさにそう答える。


「マジかよ、だから元気なかったのか……腹の調子悪いのもそれで?」

「う、うん……」

「大丈夫か? おい、池田ももうやめとけ」


悠人くんに続き西原くんも心配してくれて、騙してしまったことに少し罪悪感が湧いた。

けど……瀬名さんが助け舟を出してくれたおかげで、みんなに疑われずにすんだ……。