倫理的に間違ってるよ、お兄ちゃん……!


「う……ひ、なこ……」


力ない声に名前を呼ばれて視線を向けると、うっすらと目を開けているお兄ちゃんと目が合った。


「お、俺……補習に向けて必死に勉強、したんだよ……」

「……」

「留年したら、母さんたちにも迷惑かかるし……自業自得だってわかってんだけど……」


苦しそうに呼吸をしながら、必死に話すお兄ちゃんの姿に胸を打たれる。


「お前にしか……頼れ、ないんだ……」


泣きそうな顔で見つめられ、私は自分の手をぎゅっと握りしめた。


「……1週間、だけだ……」

「…………1週間、だけ……?」


少しずつ、前向きに検討し始めている自分がいた。


「で、でも、バレちゃったらどうするのっ……?」

「大丈夫だ……お前と俺、黙ってたら母さんでも、見分けつかねーだろ……」


確かに、お兄ちゃんの言葉は正しかった。

私とお兄ちゃんは、二卵性の双子だけど、驚くほど似ている。

お兄ちゃんのほうが少し背が高いし、私は髪が長いけど、それを誤魔化すことさえできれば、きっと見た目でバレることはないだろう。