私、白川日奈子は今、私立帝ヶ丘学園高等学校の正門を前に立ち尽くしている。
き、来てしまった……。
今日から私は、1週間ここに通うことになった。
女の私が、“男子校”であるこの高校に――。
なぜこんなことになってしまったかというと、話は昨日に遡る。
「い、胃腸炎……!?」
男子校で寮生活をしているお兄ちゃんが突然帰ってきたかと思えば、帰宅早々力尽きたように眠ってしまった。
なんとか部屋のベッドに運び込んだあと、お兄ちゃんの手に握りしめられていた診断書に書かれた病名を見て、お母さんがため息を吐く。
「日奈太、明日から1週間補習なのよ……最終日の日曜の追試に落ちたら、留年なんだって」
「りゅ、留年……?」
お兄ちゃんって、そんなに頭悪かったの……?
ていうより、代わりに通ってくれってもしかして……。
「私に、補習受けろって、いうこと……?」
じょ、冗談だよね……?
だって私、一応女だよ……?
いや、それ以前に代わりに試験を受けるなんて不正行為にもほどがあるっ……!