なんとか瀬名さんから逃げ出し、校舎にたどり着いた。

早朝ということもあり、まだ人の姿はなく、物陰にあるベンチへと座る。

ふぅ……と息を吐いたとき、ポケットの中のスマホが震えた。

慌てて取り出し、画面を確認すると、そこには【桜ちゃん】の文字が。

私は通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。


『もしもし日奈子ちゃん?』

「桜ちゃん、こんな朝早くからどうしたの!?」

『今日から男子校に行くって言ってたから、心配で……』


電話越しにそう言ったのは、同じ高校に通う親友の桃井桜ちゃん。

桜ちゃんには昨日、電話で男子校に行くということを伝えた。

私と同じ……というより、私以上に男の子がダメな桜ちゃんは、すごく驚いたあと、とても心配してくれた。

やめたほうがいいんじゃないかな?と何度も言われたけど、最後には日奈子ちゃんが決めたことなら……と言って送り出してくれた。