「京壱さま、百合園さまがいらっしゃいました」



使用人の声に、口角を吊り上げた。

はぁ……やっと来た。



「通して」



すぐに返事をすると、数分して、再び扉をノックする音が部屋に響く。



「京ちゃん……は、入ってもいい……?」



乃々の控えめな声が聞こえて、こんなときでも可愛いと思わずにいられない自分に少し呆れる。

乃々が謝ってくるまで、甘やかすのはダメだ。

そんなことをしたら、また他の男についていってしまうかもしれない。

今までは、男のほうに牽制していたけど……他の男と接したら、俺が怒るということをそろそろ乃々にちゃんとわからせないといけない。



「いいよ、入っておいで」



いつもどおり。でも棘のある言い方をあえて選んだ。

ゆっくりと、部屋の扉が開けられる。

俺は乃々に背を向けて、PCを弄り続ける。