噛みしめた唇から、鉄の味が広がる。
あの男は……絶対に許さない。
俺の乃々に触れたことを、一生後悔させてやる。
それに、乃々も……あんな男に気を許して……。
必死にあの男を庇っている乃々の姿が脳裏を過って、嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。
本当は他の男と2人きりにして置いていくなんてこと、したくはなかったが……少し、わからせたほうがいい。
無理やり引き剥がすんじゃなく、乃々の意思で俺を選んで貰わないと意味がないから。
呆れたふりをして俺が出ていったあと、きっと乃々は泣いているはずだ。
反省して、謝りに来るだろう。
あー……早く俺のところに戻っておいで。
乃々が泣いて謝るなら、どんなことでも許してあげるよ。
もうあいつに近づかないって……俺だけを見るって約束したら、優しく抱きしめてあげるから。
1人きりの部屋で、PC画面に映る新川和己の情報を確認しながら、乃々が来るのを待つ。
今もあの男といるのかと考えたら、嫉妬で気が狂いそうだった。
――コン、コン、コン。
部屋のドアが、3度ノックされる。