「俺は平気。それより、乃々が風邪ひいたら大変だから」
ポンッと頭を撫でられ、それ以上何も言えなくなる。
「あ、ありがとう……」
素直にお礼を言って、京ちゃんが貸してくれたマフラーをぎゅっと握った。
京ちゃんがつけていたからか、マフラーは温かくて、ふわりと京ちゃんの匂いがする。
「えへへっ……京ちゃんの匂い……あったかい」
なんだか幸せな気持ちになって、思わず笑みが零れた。
「……」
……ん?
「京ちゃん?」
視線を感じて隣を見ると、京ちゃんがじーっと私を見て固まっていた。
私の呼びかけに、我に返ったのかハッとした表情をして、いつもの優しい笑みを浮かべる。
「……あぁ、なんでもないよ」