「ほんと、に……?」
少しだけ希望が見えた気がして、顔を上げる。
見上げるように新川先輩を見つめると、先輩の喉がごくりと息を呑んだように動く。
「……その顔はずるいよ」
「え……?」
「ううん。ほら、泣かないで……今日は俺と一緒に帰ろうよ。一緒に、謝る言葉考えよう?」
親指で私の涙を拭って、ふわりと微笑む新川先輩。
割れ物を扱うような触れ方も、優しい口調も、全部が心に染みて、不安が少しずつ取り除かれていくみたいだった。
「しんかわ、せんぱいっ……」
感謝してもしきれない。
返事をする代わりに、頰に添えられた新川先輩の手に自分の手をそっと重ねた。
また、頭上からごくりと息を呑む音がする。
「あー……このまま奪っちゃダメかなぁ……」
新川先輩が何か呟いた気がしたけど、私の耳には届かなかった。

