腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



どうして私は、こんなにも京ちゃんのことがわからないんだろう……。

優しい京ちゃんがここまで怒るなんて、よっぽど腹を立てさせるようなことをしてしまったんだ。

教室で待っててって……言われたのに、約束、破っちゃったからっ……。

……そういえば。

ポケットに入れていたコーヒーに、手を伸ばす。

温かいものを買ったのに、それはすっかり冷たくなっていた。

まるで京ちゃんの私への気持ちを表しているようで、そう思った瞬間、堪えていた涙が溢れて視界が歪む。

どうし、ようっ……。



「京ちゃんに……嫌われちゃった……っ」

『もういいよ。そいつのそばにいたいならいればいい』



あんな突き放す言い方をされたのは、生まれて初めてだった。

その場に、崩れるようにしゃがみ込んだ。



「どう、し……よう……」



目の前が真っ暗になるっていう言葉を、自分が理解する日が来るなんて思わなかった。