腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。




「もういいよ。そいつのそばにいたいならいればいい。乃々に必要なのは俺じゃなくて、そいつってことでしょ?」

「……え?」



まるで見放すような言い方に、心臓がズキリと痛んだ。



「バイバイ。俺はもう帰るから」



そう言って、私から手を離して、背を向けた京ちゃん。



「っ、待って京ちゃ……!」



置いていかないで……と言う前に、京ちゃんは教室を出て行ってしまった。

……結局、何もわからなかった。

京ちゃんが怒っている理由……。

わからないから、愛想尽かされちゃったんだ……。



「……すごい子供っぽい。ひどい幼なじみだね」



私に気を使って、そう言ってくれる新川先輩。

でも、私はその言葉に何も返事ができなかった。

悲しくて悲しくて、涙を堪えるのに必死だった。