腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。


優しい京ちゃんの面影すら、今は見えなかった。



「そんな強引にしたら、乃々ちゃんがかわいそうだろ?」



心配してそう言ってくれた新川先輩を、まるで汚いものを見るような目で見る京ちゃん。



「……俺と乃々のことに、部外者が口出しする権利はない」

「別に部外者ではないと思うけど、俺」

「……それは、どういう意味で言ってるんだ?」



今にも掴み掛かりそうな勢いに、慌てて止めに入った。



「……きょ、京ちゃん、やめて……! 新川先輩は何も悪くないから……!」



本当に、慰めてくれただけで……。



「……乃々はいつも、そいつを庇うね」



京ちゃんの声色が変わった。

それはさっきまでの、威圧感のあるものではなく、哀しみを含んでいるように聞こえた。