腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「幼なじみくんは気に入らないけど、仕方ないから離してあげる。乃々ちゃんもう大丈夫? 平気?」



私が泣きじゃくっていたことを心配してくれた新川先輩の優しさに、心が温かくなった。



「は、はい……」

「ん、また何かあれば、いつでもおいで。待ってるから」



新川先輩……。

優しくポンッと頭を撫でられて、自然と頰が緩んだ。



「……おい、いい加減にしろ。その顔めちゃくちゃにされたいのか?」



……え?



「きゃっ……!」



荒っぽい足音が聞こえたと思ったら、次の瞬間、強く後ろに手を引かれた。

バランスを崩し転倒しそうになったけど、京ちゃんが抱きしめるような形で支えてくれる。

抱きしめる手の強さに、少しだけ顔を歪めた。

京ちゃん……本当にどうしたの……?