腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「ち、違うよっ……! 新川先輩は、私のことっ……」



慰めてくれたの、と言おうとしてやめた。

ダメだ……私がどうして泣いていたのか、京ちゃんにバレちゃう。


告白しているところを見てしまったなんて……ましてや、京ちゃんに好きな人がいると聞いてしまったなんて、絶対に言えない。



「……あ、あの……勝手に教室から出ちゃって、ごめんなさい……」



とにかくまずは謝ろうと思って、そう口にする。



「……謝らなくていいから、早くそいつから離れて」



京ちゃんは、いったい何が気に入らないのか。

なぜか一刻も早く、新川先輩と私を引き離したいらしく、鋭い目で先輩を睨んでいる。

これ以上、京ちゃんのこと怒らせたくないから……言うこと聞いたほうが、いいのかな?

ちらりと、新川先輩を見上げる。

先輩はすぐに私の考えを察してくれたらしく、にっこりと微笑んでくれた。