腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



もう、京ちゃんの声も、瞳も、その優しさは全部……恋人に向けられるようになるのかもしれない。

ぎゅっ……と、私からしがみつくように、新川先輩の服を握った。

それに応えるように、先輩は私の背中に手を添えて、あやすように摩ってくれる。

まるで、“甘えてもいい”と言われているような安心感に包まれて、さらに強く、しがみつこうとしたときだった。


――ガラガラ。


教室の扉が開く音がしたかと思えば……。



「……何してるの?」



感情の読めない、大好きな人の聞いたことのないような低い声が響いたのは――。



「……えっ……?」



京……ちゃん?

声のするほうに顔を向けると、そこには、真顔だけど、“怒っている”ということが容易にわかるような表情をしている京ちゃんがいた。

どうして、ここに……?



「あーあ……バレちゃった」



抱きしめられている腕に、力が入ったのがわかった。