腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「……ふ、ぅっ……うぁっ……」



私は新川先輩の胸に顔を押し付けて、小さな子供のように泣きじゃくった。

さっきの京ちゃんのセリフが、何度も脳裏を過る。



『好きな子がいるんだ』



京ちゃんの、好きな女の子……。

その相手が羨ましくて、心臓が潰れそうなほど痛かった。

京ちゃんは、その子と……いつか、恋人に、なったりするのかな……?

かっこよくてなんでもできる京ちゃんだから、告白したら、相手の子も喜んで受け入れるよね……。

もし、そうなったら……私は?

もう、今までみたいに……京ちゃんのそばにいられなくなっちゃうっ……。

だって、私はただの幼なじみだもの。

好きな人に、勝てるわけがないっ……。

きっと京ちゃんは、これからその子と行動をともにするようになって、私といてくれる時間はどんどん減っていっちゃう……。



『乃々』



あの優しい声で、その子の名前を呼ぶんだ。