腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。


「こっちおいで」



そう言って、先輩は私をすぐ近くの空き教室へと引っ張っていき、ドアを閉めた。



「乃々ちゃんの泣き顔、かわいそうで見てられないや」



――え?


先輩の言った言葉の意味を考えるより先に、新川先輩のほうへと、引き寄せられる私の身体。



「……せんぱ……っ」



次の瞬間、私は新川先輩に抱きしめられていた。

ますます意味がわからなくて、もう頭の中は混乱状態。

どうして、抱きしめられて……っ。

驚きのあまり抵抗することも忘れていると、先輩は抱きしめたまま、ポンッと優しく私の頭を撫でた。



「よしよし、泣かないで。泣き止むまで、俺が慰めてあげる」



そのセリフで、新川先輩が私を慰めようとしてくれているのだとわかった。

先輩の優しさに、涙は止まるどころか、勢いを増す。