腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「きょ、ちゃん……好きな人、いるって……」

「……え?」

「私、知らなかっ……っぅ」



……いつから、だろう。

そうだよね、好きな人がいるなんて、当たり前のことなのに……。

どうして、気づかなかったんだろう。

京ちゃんの好きな人って、誰……?

クラスの女の子? お父さんの会社関係の人……?

 “失恋”という言葉が、私の心に重くのしかかる。

覚悟はしていたはずなのに、受け入れることができなかった。
だって、そんな……。

今まで好きな人がいるようなそぶり、見せなかった……のに。



「……乃々ちゃん、ほんとに何もわかってないんだね」



……え?

新川先輩が、私を見つめながら微笑んだ。

どうして笑うのかわからなくて、言葉に詰まった私の腕を、先輩がもう一度ガシリと掴む。