腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「椎名くんのこと……ずっと好き、でした……」



あらためてそう言ったクラス委員の女の子に、まっすぐ向き合った京ちゃん。



「ありがとう。嬉しいよ。でもごめんね、君の気持ちには応えられない」



その返事に、ホッとしてしまった性格の悪い自分が嫌だと思った。

振ったことに安心するなんて、最低だ私……。

いくら私が京ちゃんのことを好きだからって……。

それに……明日は我が身かもしれないのに。



「えっと……その、理由を聞いても……」

「好きな人がいるんだ。その人以外の女性は、考えられない」

「……っ」



京ちゃんの言葉に、息を呑んだ。

今、“好きな人”って、言った……?



「うわー、すごい場面に遭遇しちゃったね。……って、乃々ちゃん?」



小声で、新川先輩が何か言っている。

けれど、言葉が入ってこない。