腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「……あれ?」



他愛もない話をしながら教室までの道を歩いていると、新川先輩が突然歩く足を止めた。



「どうしたんですか……?」



不思議に思い首を傾げると、人差し指を私の口の前に持ってきた新川先輩。



「しっ。……あれって、幼なじみくんだよね?」



……え?

通り過ぎようとしていた教室の中を指さす新川先輩に、私も視線を移す。

そこには、クラス委員の女の子と話している、京ちゃんの姿が見えた。



「あっ……ほんとだっ……」



どうして、こんなところで話しているんだろう?

こんな、誰もいない空き教室で……。



「わかった、先生には僕から言っておくよ」



教室の中から、京ちゃんの声が聞こえてきた。

私は新川先輩に促されるまま、とっさに教室のドアに隠れる。