腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。


「あ……ごめんなさい」

「うそうそ。いや、嘘ではないけど、謝らないで」



笑顔でポンッと頭を撫でてくれた新川先輩に、嬉しくなって頰を緩めた。

相変わらず……って、まだ少ししか話したことはないけど、新川先輩は優しいなぁ……。

重たかった気持ちが、新川先輩のおかげで軽くなる。



「……あれ? 乃々ちゃん、缶コーヒーなんて飲むの? しかもブラック。意外だね」



私が持っている缶コーヒーを見て驚いた表情を浮かべた新川先輩に、首を振った。



「あ……違うんです。これは京ちゃんに……」

「あー、なるほどね」

「なんだか、最近疲れてるみたいで……っていうより、やっぱり私に怒ってるのかな……」



自然と、そんな言葉を口にしていた。

喜んでもらえると思ってコーヒーなんて買ったけど……もし苦手なやつだったらどうしよう……。

ますます、怒られちゃうかもしれない……。

京ちゃん、今まで怒ったことなんて、一度もなかったのになぁ……。

そう思うと、胸がきゅっと締め付けられた。